日記・症例解説
パニック症
先日、所属している鍼灸学術団体で勉強会があり、パニック症(パニック障害)について講義を受けてきました。
東洋医学では奔豚気(ほんとんき)という不快感や痛みが下腹部に起こり続いて心・胸・咽喉にまで達し、胸の上で子豚が走り回るような症状・動悸や頭痛、めまいや胸の苦しさなどが起こる弁病(病名)があり、現代でいうパニック症(パニック障害)に類似しています。
今回、同じ鍼灸団体の方が実際に行った症例は、過去につらい経験があり緊張しやすい性格の方が、ストレスや疲労、飲食不節や運動不足が加わったのち頭痛や動悸が始まり、更に精神的な疲労が強くなった頃に人ごみや仕事中に不安感や動悸・胸苦や吐き気などパニック症を発症した例でした。
もともと緊張しやすく気が鬱滞しやすい状態のところにストレスや疲労・生活習慣でより気が鬱滞してこの籠った気が熱化。熱は上にある心の臓を襲い不安感や動悸、胸苦が出現したと考えられます。心の臓を営養する心血が不足していると判断し、補う鍼を続けたところ症状が緩解された例でした。
その後はツボの状態などをみて心血を補ったり鬱滞した気・熱を散らしたりする鍼をされているそうです。
パニック症は以前勤めていた鍼灸院で最も多い症状でした。個人差はありますが週に2回の施術を3カ月ほど続けられるとパニック症状はかなり治まっていました。
ただ完全に取りきるには時間がかかり、残った症状は焦らず時間をかけて根気よく治していくという印象です。
勤務を始めて間もないころ、初めて私が問診担当させていただいた患者さんがいます。
この方はパニック症と診断はされていませんでしたが、人混みが辛い、買い物や銀行のATMの列に並べないという症状に加え、身体的な症状も沢山お持ちの方でした。
初めて初診予約の問い合わせ電話を私が取ったとき、そもそも一時間の問診に耐えられるかわからない、使っている枕はどんなものか、女性スタッフに担当してもらえないか等々、初めてのこと、分からないことにとても不安を感じているようでした。
しかし後日勇気を出して初診に来てくださり、お話を聞かせていただき一生懸命週2回鍼灸を数カ月続けられ、みるみる変わっていきました。
施術後は自宅へ直帰していたのが「ちょっと帰りにここ寄ってみようかな・・・」と気になるお店に寄るようになり、列にも並べるようになったと仰っていました。
なにより「まだ○○の症状は少しあるけど以前より良くなっている。○○と○○はできるようになった!」等、ご自身に起こる少しの変化に気付き、喜び、常にポジティブなことを仰っていました。
施術は院長が行い、私は問診や他のサポートでしたが、どんどん変わっていく姿をみてとても嬉しかったです。
退職して一年以上経ちましたが、この方が更に元気になっていればいいなと思うのと同時に、私も今どこかで辛い思いをされている方のサポートができたらと思います。
不眠
今回は不眠について考えていきたいと思います。
不眠に悩まされている方は多いと思いますし、当院へも不眠を訴えてこられている方もいます。
以前に勤めていた鍼灸院で院長の後ろでいつも治療を見ていたときから、不眠はなかなか手強いなという印象です。
不眠症について、以下メディカルノート様より引用させていただきました↓↓
‘’不眠症とは、良質な夜間の睡眠を十分に取ることができず、仕事や学業に支障をきたすなど日中の機能障害が生じた状態を指します。不眠症状には寝付きが悪い(入眠困難)、夜間に目覚めてその後眠れない(睡眠維持困難)、朝早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)などのタイプがあります。
不眠症を引き起こす原因はさまざまであり、心理的なストレス、飲酒、薬物、身体の不調など多くのものがあります。不眠に関しての問題を抱える人の割合は高く、成人の30%以上が一過性の不眠症状を経験し、10%ほどが不眠症に罹患していると報告されています。’’
東洋医学で不眠症は「不眠」「失眠」などと言い、以下の考えになります。
1. 心の臓の陰(潤す・冷ます力)が不足して心陽が旺盛になり心神が不寧となり不眠に。なかなか寝つけずさらに眠っても夢を見たり目が覚める。
2. 心と腎の臓がうまく交流しない。温めたり活発になる心陽と、冷ます・潤わす・落ち着かせる腎陰(火と水の関係のようなもの)が相互に助け合わなくなり不眠に。不眠が甚だしく転々反側して夜通し眠れないこともある。
3. 思い悩みすぎる・労倦などにより心や脾の臓が損傷され、脾の臓で気血生化が不足して心血が保養されず心神不安となって不眠に。
4. 驚きや恐怖のために胆の気が損傷し、決断ができなくなり恐怖感があって入眠できない。寝ついても驚いて目が覚めやすい。
5. 悩みや怒りで肝の臓の疏泄(気血を流す力)が失調し肝の気が鬱滞して化火、もしくは飲食不節で湿熱が生じ、この湿熱が肝胆の臓に鬱滞して化火。この熱が心神不安をきたして不眠に。睡眠が浅くよく目が覚めやすい。
6. 心労のために心火が亢盛となり心神が不安となって不眠に。
7. 熱病の後期で余熱が残っている場合にみられ、心神を乱すことにより不眠に。
環境や精神面が多く関わると思いますし、年齢や身体疾患でも差があるかと思います。
眠れないことに悩み、気にしたくなくても気にしてしまう、早く薬をやめたいと焦ってしまい悪循環に陥り慢性的な不眠に悩んでいる方が多いと感じます。
散歩などの適度な運動、あっさりした腹八分目の食事を心がけ、就寝前のスマホやテレビを控え、焦りすぎず整えていきたいですね。
梅核気(ばいかくき・喉の閉塞感)
今年もあと僅かとなりました。12月は忙しくされているが多いのではないかと思います。
わたしは先日、所属団体の勉強会に参加するため東京へ行ってきました。
病因病理(病の原因、メカニズム)の歴史、論理的思考についての講義を聞き、会の代表が患者役の方に問診し、実際に治療するという一連の流れを見せていただきました。
鍼の刺し方など技術面も大切ですが、この治療方針を固め、鍼一本に絞り込むことが本当に難しく、私自身もっと励まないといけないなと思う分野です。
ところでここ最近は「喉になにか詰まっているような閉塞感」を訴えられる方が続けてお二人来院されました。
実際に喉に詰まっていないのに異物で閉塞感されている感覚があり、咳払いしても飲み下そうとしても改善しないけれど嚥下には問題ないという症状。
こういった症状を梅核気(ばいかくき)といいます。梅の種が詰まったような症状です。
なので梅核気について少し書いてみようと思います。
東洋医学の考えで梅核気はこのように分類されます
1. ストレスや疲れ・環境の変化などで肝の臓の働きが失調し、気の昇降が停滞して起こる
2. 脾の臓の働きが失調して痰湿(余分な水分・痰・湿気など)が生じて痰が停滞し、気が滞って起こる
3. 肺の臓の熱が続き陰液(水・冷ます・潤すもの)が消耗して咽喉が潤わされないために起こる
問診や体表観察(お体やツボの状態のチェック)でお二人とも1に該当していると考え、お一人は頭に、もうお一人は足に鍼をし、この症状は消失しました。
その他にも呼吸が浅く吸えない、逆上せ、動悸、胃の不調、お腹の張りなど、それぞれ症状もありましたが同時に消失、または軽減されました。
忙しい年末年始、元気に過ごしていただきたいです。
勉強会の帰り、東京駅近くの丸ビルの富澤商店さん(製菓製パン材料専門店)に行ってきました。
去年習った米粉シュトレンと米粉バニラキプフェル(三日月の形をしたクッキー)を先日やっと作れました。
クリスマスに間に合ってよかったです・・・
素敵なクリスマス、年末をお過ごしください^^
更年期障害
今回は更年期障害について書いてみようと思います。
公益社団法人日本産科婦人科学会のページから引用させていただきました↓
閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間を「更年期」といいます。更年期には様々な症状(更年期症状)が現れますが、特に症状が重く日常生活に支障をきたすような状態を「更年期障害」といいます。
更年期障害の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことです。さらには、加齢によるからだの変化や、精神的・心理的な要因、家庭や職場などの社会的要因などが、複合的に影響して、更年期障害を発症すると考えられています。
のぼせ、火照り、多汗や疲労感、肩こりや眩暈、憂鬱な気持ちになったり不安感がでたりと症状は多岐にわたります。
この更年期に不調を訴える方も多いと感じますし、これまで問診させていただいた実感としては気付いていなかったけれども不調が出たタイミングがちょうど閉経の前後だったということが多くありました。
東洋医学では閉経前後に「腎」の臓(生命活動に必要な精を蔵す生体の本)が衰えてきて精気が不足し、陰陽のバランス(分かりやすく書くと水と火のバランス)が失調し、他の臓(肝や心)にも変調を起こすと考えられます。
陰陽バランス(水と火のバランス)が失調しているので下半身は冷えるのに同時に上半身はのぼせたり火照ったり、発汗、イライラなどがおこったりします。
基本的には腎の病証と考えられるので、腎の温める力、または冷ます・潤わす力が不足していたらそれを補いますが、問診や体表観察で気の高ぶり、鬱滞、熱が籠っている状態が上回ると判断した場合はその鬱滞している気や熱を散らす・冷ますことを行います。
更年期ではないけれど同様の症状に悩まれている方も多いと思います。
期間はかかりますが、お体に起こっている気の歪み・陰陽のアンバランスを整えていくことでこれらの症状が楽になります。
動悸
動悸について中医学の考えを書いてみようと思います。
動悸とは心臓がいつもより速く激しく拍動する感覚です。
私の周りにも動悸を経験された方は多くいますし、過去に勤めていた鍼灸院にも動悸を訴えられる方は多くいました。
過去に私自身もプレッシャーで軽く動悸が起こったことがあり、同じ流派の鍼治療を受けたことがあります(左右どちらか忘れましたが小指の付け根のツボに一本)
動悸は中医学で怔忡(せいちゅう)と驚悸(きょうき)に分けられます。
<怔忡>
明らかな外因がなく動悸を自覚し、器質的に問題がある場合が多く症状として重いもの。
<驚悸>
驚きや焦り、いら立ち、悩みなどの精神的要素、疲労によって動悸が誘発されるもの。長引くと怔忡となる。
動悸は中医学でいう「心(しん)」の臓が深く関わります。
・突然の驚きや恐怖感を感じること、ストレスや考えすぎ、また出血、発汗過多で心を栄養する血や陰が不足してしまい不安感や動悸が起こる。
・長く患っていた病気や虚弱体質で心の気が不足し血脈の正常な運行を保持することができず動悸。
・飲食の不摂生や脾の臓、腎の臓の働きの低下で体内に痰濁・水飲(体内の余分な水分・湿気)が停滞し、心を犯して動悸。
・加齢や労倦で腎の陰が不足、心の母である肝の臓の血・陰が栄養・潤いが不足すると、心陽を抑えられず体内で燃え上がり火を制御することができず動悸
・心の運血機能が低下すると瘀血(滞った血)が形成され心脈が阻塞されることによって動悸
などがあります。
動悸するからここのツボに鍼を、灸をする!というのではなく、発生機序によって鍼灸からのアプローチも養生法も変わってきます。




