雑記・症例解説
更年期障害
今回は更年期障害について書いてみようと思います。
公益社団法人日本産科婦人科学会のページから引用させていただきました↓
閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間を「更年期」といいます。更年期には様々な症状(更年期症状)が現れますが、特に症状が重く日常生活に支障をきたすような状態を「更年期障害」といいます。
更年期障害の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことです。さらには、加齢によるからだの変化や、精神的・心理的な要因、家庭や職場などの社会的要因などが、複合的に影響して、更年期障害を発症すると考えられています。
のぼせ、火照り、多汗や疲労感、肩こりや眩暈、憂鬱な気持ちになったり不安感がでたりと症状は多岐にわたります。
この更年期に不調を訴える方も多いと感じますし、これまで問診させていただいた実感としては気付いていなかったけれども不調が出たタイミングがちょうど閉経の前後だったということが多くありました。
東洋医学では閉経前後に「腎」の臓(生命活動に必要な精を蔵す生体の本)が衰えてきて精気が不足し、陰陽のバランス(分かりやすく書くと水と火のバランス)が失調し、他の臓(肝や心)にも変調を起こすと考えられます。
陰陽バランス(水と火のバランス)が失調しているので下半身は冷えるのに同時に上半身はのぼせたり火照ったり、発汗、イライラなどがおこったりします。
基本的には腎の病証と考えられるので、腎の温める力、または冷ます・潤わす力が不足していたらそれを補いますが、問診や体表観察で気の高ぶり、鬱滞、熱が籠っている状態が上回ると判断した場合はその鬱滞している気や熱を散らす・冷ますことを行います。
更年期ではないけれど同様の症状に悩まれている方も多いと思います。
期間はかかりますが、お体に起こっている気の歪み・陰陽のアンバランスを整えていくことでこれらの症状が楽になります。
動悸
動悸について中医学の考えを書いてみようと思います。
動悸とは心臓がいつもより速く激しく拍動する感覚です。
私の周りにも動悸を経験された方は多くいますし、過去に勤めていた鍼灸院にも動悸を訴えられる方は多くいました。
過去に私自身もプレッシャーで軽く動悸が起こったことがあり、同じ流派の鍼治療を受けたことがあります(左右どちらか忘れましたが小指の付け根のツボに一本)
動悸は中医学で怔忡(せいちゅう)と驚悸(きょうき)に分けられます。
<怔忡>
明らかな外因がなく動悸を自覚し、器質的に問題がある場合が多く症状として重いもの。
<驚悸>
驚きや焦り、いら立ち、悩みなどの精神的要素、疲労によって動悸が誘発されるもの。長引くと怔忡となる。
動悸は中医学でいう「心(しん)」の臓が深く関わります。
・突然の驚きや恐怖感を感じること、ストレスや考えすぎ、また出血、発汗過多で心を栄養する血や陰が不足してしまい不安感や動悸が起こる。
・長く患っていた病気や虚弱体質で心の気が不足し血脈の正常な運行を保持することができず動悸。
・飲食の不摂生や脾の臓、腎の臓の働きの低下で体内に痰濁・水飲(体内の余分な水分・湿気)が停滞し、心を犯して動悸。
・加齢や労倦で腎の陰が不足、心の母である肝の臓の血・陰が栄養・潤いが不足すると、心陽を抑えられず体内で燃え上がり火を制御することができず動悸
・心の運血機能が低下すると瘀血(滞った血)が形成され心脈が阻塞されることによって動悸
などがあります。
動悸するからここのツボに鍼を、灸をする!というのではなく、発生機序によって鍼灸からのアプローチも養生法も変わってきます。
膀胱炎
今回は膀胱炎について書いてみようと思います。
膀胱炎の症状は頻尿や排尿時痛、残尿感などがありますが
主な原因としては膀胱への細菌感染であり、
ストレスや疲労で体の抵抗力が落ちている状態にある時や、排尿を我慢し膀胱に尿が長時間溜まると細菌が増殖し膀胱炎症状を発症します。
東洋医学で膀胱炎は「淋証(りんしょう)」などと言われています。
以下、専門的な表現が含まれますが東洋医学的な膀胱炎の発症について載せます↓↓
1.脂っこいものや甘いもの、アルコールなどの飲食で湿熱が生じ、膀胱で感受して排尿痛が発生する。
・湿熱が膀胱に下注し血熱が妄行し、排尿時に熱感、疼痛、血尿がみられる。
・湿熱が膀胱に下注し、膀胱の気化作用(物質転化の機能)が失調して清濁を分けられられなくなり混濁尿がみれらる。
2.ストレスで心の熱が盛んになり表裏関係の小腸に熱を移して発症する。
3.外傷や寒邪で気血の巡りが悪くなり、下焦(簡単な表現すると臍下)瘀血(滞った・淀んだ血)が停滞して下腹部の張った痛み、刺痛・鈍痛が起こる。
4.加齢や疲労、性生活の乱れなどで腎の臓腑の陰が虚して内熱により膀胱の気化が失調し、排尿に灼熱感を伴う。
などがあります。
鍼灸で膀胱炎の治療?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
当院でもある日、患者さんのツボの状態を確認していたところ、いつも以上に下腹部や脇腹などにあるツボに熱感が。
もしかして・・・と思い「膀胱炎の症状は出ていませんか?」とお聞きしたところ
「2日前から排尿時に違和感がある」とのことでした。
(この方は高齢の患者さんで、過去に膀胱炎や血尿をよく起こしていたと事前に聞いておりました)
膀胱の表裏関係である腎の臓を補いつつも熱を捌くよう右のお腹に鍼をしたところ
舌の色が明るくなり乾燥が改善され、ツボの熱感が改善しました。
その後抗生剤を服用しつつでしたが長引かず終わりました。
なぜ膀胱炎になったのかその発生機序を考えて、
なっても軽く済むように施術、養生法をお伝えし、今後できる限り起こらないようにしたいと思った症例でした。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)に挑む
またまた今回も簡単ではありますが、今現在挑んでいる症例について書いてみようと思います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断され、ハードな運動や仕事の動作で息切れがある50代の男性。
検査で肺年齢は実年齢よりもはるか上の90代と診断されています。
今のところ日常生活には問題なく過ごせていますが、進行をできる限り抑えたい。好きな運動がもっとできるようにと
遠方&仕事で忙しい中、毎週ではありませんが時間をみつけては通ってくださっています。
COPDは慢性気管支炎や肺気腫の総称で、たばこの煙や大気汚染など有害な物質を長期間吸入することで肺に炎症を起こす病気です。
症状としては咳や痰、喘息症状や労作時呼吸苦があり、進行するとわずかな動作や安静時でも呼吸苦が起こります。
初診でお話を詳しく聞き、体表観察(からだの状態・ツボなどをみる)をして、
からだの上部に強い熱があること、東洋医学の臓腑でいう肺・肝・腎に特に問題があり、また瘀血(おけつ・滞った血)の存在があるとみました。
初回は肺を補い、潤わせるよう背中に1本鍼をしたところ、
もともとアレルギー症状があり鼻詰まり、鼻水がありましたが(問診中も鼻ズルズルされて苦しそうでした)
鼻通りがよくなり、鼻水も減り、ランニングのタイムが伸びたとご報告いただきました。
鼻は肺の臓の入り口であるため、肺を補うことでこれらの症状が改善したとみています。
その後数回治療をつづけていますが、主訴の息切れは不変です。
しかし毎年、特に春・秋はアレルギーの薬を飲んでも酷かった症状が、現在は随分楽になり、アレルギーの薬なしで過ごされていて、肺だけでなく全身のツボの状態も変化してきました。
COPDは治療によっても壊れた肺(気管支・肺胞)は元に戻ることはないと言われています。
しかし時間もかかると思いますが、治療を続けていくとで進行を遅らせたり、QOL(生活の質)を向上させられると信じています。
日々変わるツボの状態のや体の変化を捉え、そのつど適切な処置ができるように努め、
この方がもっと好きな運動ができるように、笑顔が見られるようこれからも挑んでいきたいと思います。
過敏性腸症候群ガス型
先日、所属する鍼灸の団体の講義で、「過敏性腸症候群ガス型」についての講義がありました。
過敏性腸症候群とは??
以下、「おなかの健康ドットコム」様のページを引用させていただきました。
https://www.onaka-kenko.com/various-illnesses/large-intestine/large-intestine_06.html
”過敏性腸症候群(IBS)とは、特に消化器の疾患がないにも関わらず、腹痛と便秘、または下痢を慢性的に繰り返す病気です。腸管の運動が異常に亢進し、刺激への反応が過敏になることで引き起こされると考えられています。
主な原因は、ストレス、不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因や自律神経の失調とされています。社会の複雑化やストレスの増加に伴い、症状に悩む人が増えている病気で、次の4つのタイプに分類されます。
1.下痢型
急に便意をもよおす。激しい下痢症状。1日に何度もトイレに行く。水のような便、粘液のある便。
2.便秘型
腹痛・腹部膨満感。繰り返す便秘。便が出にくい。水分のないコロコロとした便。
3.混合型
便秘と下痢を繰り返す。ストレスを感じるとおなかの状態が不安定になる。
4.分類不能型
上記3つに分類されない症状。おならが頻繁にでる、膨満感がある場合は「ガス型」と呼ばれる。”
今回の講義では4の分類不能型について勉強してきました。
東洋医学ではガスは「失気」や「矢気」と表現され、気の滞りや飲食の停滞で起こる、またストレスで胃や腸の働きを失調させ起こると考えられています。
今回の症例ではストレスで高ぶっていた肝という臓腑の気を抑え、気の滞りを改善させ、弱っていた胃腸の気を補い、症状を緩解させた例でした。
私も環境が変わったり、精神的なプレッシャーで過敏性腸症候群の症状が出ていたのでこの症状の辛さは私自身も経験しています。
こういったとても苦しく相談しにくい症状、今回の過敏性腸症候群だけでなく、
精神的なプレッシャーなどで起こる辛い症状を抱えている方を治すために
勉強を続けていきたいと思う、印象に残った講義でした。

